効率の良い勉強法ばかり探すと…
「効率の良い勉強」を探しすぎていませんか?
―茨高を目指す小学生のお母さんに気をつけてほしいこと―
「先生、もっと効率の良い勉強法はありませんか?」
塾で指導をしていると、保護者の方から、このようなご相談を受けることがあります。
もちろん、効率は大切です。同じ時間を使うのであれば、より理解が深まり、しっかり定着する方法で勉強した方がよい。わざわざ効率の悪い勉強をする必要はありません。
ただ、ここで一度考えていただきたいのです。
その「効率の良い勉強」という言葉で、何を求めておられるでしょうか。
「努力したことが、きちんと成果につながるようにしたい」のか。それとも、「できるだけしんどいことをせずに、成績を上げたい」のか。
この二つは、似ているようで大きく違います。
そして、指導の現場で気になるのは、効率の良い方法を探しているうちに、いつの間にか「努力をしなくて済む方法」を求めるようになってしまうことです。
■良い方法を探している間に、勉強が止まっていませんか?
生徒の中にも、「もっと効率の良い勉強をしたい」と口にしながら、目の前の勉強には、なかなか取り組まない子がいます。
問題を解く。間違えたところを直す。覚えていないことを覚え直す。そして、自分の力でできるようになるまで繰り返す。
こうした基本的なことが十分にできていないのに、「もっと良い方法があるはずだ」と探し続けているのです。
しかし、方法を探しているだけでは、学力はつきません。
どれほど良い勉強法であっても、実行しなければ成果にはつながりません。勉強法を知っていることと、実際に勉強ができるようになることは、別の話なのです。
少し厳しい言い方になりますが、「もっと効率の良い方法はないか」と考えて手を止めている時間があるなら、まず一問解いてほしい。昨日間違えた問題を、もう一度やってほしいと思います。
目の前に、まだ覚えていない漢字がある。自力で解けない計算がある。説明できない理科の内容がある。
それなら、まずそこに取り組むことです。
「良い方法が見つかったら始める」という姿勢では、勉強を始める時期が、どんどん先に延びてしまいます。
■本当の効率は、「できるようになったか」で考える
そもそも、勉強の効率とは何でしょうか。
短時間で宿題が終われば、効率が良いのでしょうか。問題集を何ページも進めれば、効率が良いのでしょうか。
私は、それだけでは判断できないと思っています。
例えば、答えや解説を見ながら問題を解けば、早く終わるかもしれません。しかし、翌日、何も見ずに同じ問題を解こうとして手が止まるのであれば、力がついたとは言えません。
反対に、少し時間がかかっても、自分の間違いを確認し、解き直し、翌日には一人で解けるようになっていたらどうでしょうか。
その時間は、学力をつけるために必要だった時間です。
見るべきなのは、「何分で終わったか」だけではありません。「取り組む前と比べて、何ができるようになったか」です。
早く終わらせることばかりを求めると、子どもは理解することより、終わらせることを優先してしまいます。
効率を考えるときには、まず勉強の目的を見失わないようにしていただきたいのです。
■取り組んだ経験があるから、助言が生きる
実際に勉強を続けていると、自分でもいろいろなことに気づきます。
「ノートを眺めているだけでは、覚えられていないな」
「解説を読んだときはわかったのに、自分では解けないな」
「できる問題ばかり繰り返して、苦手な問題を残していたな」
こうした気づきが、勉強の仕方を改善するきっかけになります。
もちろん、すべてを自分で発見する必要はありません。先生から方法を教えてもらうことも大切です。
ただ、実際に取り組んで困った経験のある子は、助言を聞いたときに「ああ、だからうまくいかなかったのか」と納得しやすいのです。
例えば、一生懸命覚えたはずなのに、テストになると思い出せない。その経験があれば、「見て覚えるだけでなく、何も見ずに答えられるか確認しよう」という助言の意味がわかります。
一方、まだ十分に取り組んでいない段階では、同じ助言を聞いても「ふうん、そうなんだ」で終わってしまうことがあります。
大切なのは、わざわざ遠回りをさせることではありません。
教えてもらった方法で、まず取り組む。その結果を確かめ、うまくいかなかったところを相談し、直していく。
この繰り返しによって、勉強の質も上がっていくのです。
■お母さんの言葉が、子どもの姿勢に影響する
小学生のお母さんに、特に気をつけていただきたいことがあります。
お母さんが日頃から「もっと楽にできないの?」「そんなに繰り返さないといけないの?」「もっと簡単に成績を上げる方法はないの?」と話していると、子どもも同じ方向で考えるようになりかねません。
少し難しい問題に出合ったとき、粘って考えるより、すぐに解き方を教えてもらおうとする。
覚えるための練習が必要なとき、取り組む前から「もっと楽な方法があるはずだ」と考える。
そうなると、学力をつけるために必要な練習から、離れてしまいます。
もちろん、お母さんに悪気がないことは、よくわかっています。
我が子に苦労させたくない。限られた時間を有効に使ってほしい。頑張るのであれば、きちんと成果を出させてあげたい。
すべて、お子さんの将来を思ってのことだと思います。
ただ、苦労を減らしてあげたいという思いが、必要な努力まで避けさせることにつながっていないか。そこは、一度立ち止まって考えていただきたいのです。
塾で「ここは繰り返して練習しよう」と伝えても、ご家庭で「そんなことをしなくても、もっと簡単な方法があるはず」と言われていれば、子どもは目の前の練習に向き合いにくくなります。
お子さんを支える大人同士が、何を大切にするのか。その方向をそろえることも、成長のために大切です。
■「まずやってみよう」と言えるご家庭に
では、ご家庭では、どのような声をかければよいのでしょうか。
「まず、先生に教えてもらった通りにやってみよう」
「昨日できなかった問題は、今日は解けるようになった?」
「やってみて困ったところを、先生に聞いてみよう」
こうした声かけは、子どもの意識を、方法探しから実際の行動へ向けてくれます。
そして、結果だけでなく、取り組み方にも目を向けてあげてください。
間違えた問題から逃げずに、解き直した。覚えにくい言葉を、自分で確認し直した。すぐに答えが出なくても、しばらく考え続けた。
そうした行動を認めてもらえると、子どもは「こういう取り組みが大切なのだ」と受け止めやすくなります。
ただし、長時間座ってさえいればよい、ということではありません。取り組んでいるのに成果が出ないのであれば、内容が難しすぎないか、やり方が合っているかを確認する必要があります。
実際の様子を見ながら改善することと、取り組む前から楽な方法を探し続けることは、分けて考えてください。
■小学生のうちに、地道に積み重ねる力を
勉強を通して身につけてほしいのは、知識や点数だけではありません。
すぐにできなくても取り組む力。うまくいかなければ、やり方を考え直す力。必要なことを、地道に続ける力。
これらは、高校での勉強にも、社会に出てからの仕事にもつながっていきます。
何かを身につけようとすれば、思い通りにいかない時期や、繰り返しが必要な場面があります。そのたびに、もっと楽な方法だけを探していては、力を積み上げることが難しくなります。
効率の良い勉強とは、努力をしなくて済む勉強ではありません。必要な努力を、成果につながる形で積み重ねていく勉強です。
茨高のような高い目標を目指すのであれば、なおさら、その土台を小学生のうちから育てておくことが大切です。
まず取り組む。そして、結果を確かめて工夫する。
お子さんがその積み重ねを大切にできるよう、まずはお母さんご自身の言葉と姿勢から、意識していただきたいと思います。

